司馬懿と諸葛亮が手紙のやり取りをしていた? その内容とは

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「正史三国志」蜀書・黄権(こう けん)伝によると、司馬懿は諸葛亮に対して書簡を送り、「黄公衡(こう こう=黄権の字)は快男子です。普段から常に貴殿を賛美し、話題にしております。」と述べています。

手紙の全てが黄権について書かれていたのか、または一部であったのかは定かではありませんが、敵である諸葛亮へ書いているのです。手紙の主が司馬懿ですから、何か意味があると思いますよね。

黄権という人物、そして司馬懿との関係についても見てみましょう。

黄権とは

黄権伝が蜀書にある通り、彼は蜀の人でした。

元は益州の牧:劉璋(りゅう しょう)に仕えていました。劉備を招き入れる事に反対していましたが聞き入れられず、その結果、益州は劉備に奪われてしまいます。その際に黄権は主君である劉璋が降伏するのを待ってから、劉備に帰順しました。主君への礼を重んじる人だったようです。

黄権は思慮深く、劉備が夏侯淵を討ち、漢中を支配したのも、元々彼の立てた計略にそったものでした。劉備は黄権を、益州の治中従事に任命しています。

そして、劉備が呉征伐を決めた際は江北の軍を指揮し、魏への備えとなりました。しかし、夷陵の戦いで劉備は大敗。黄権は帰路を遮断されてしまい、やむなく魏へ亡命したのです。

その後、曹丕から「君が逆臣の立場を捨てたのは陳平(ちん ぺい)・韓信(かん しん)(どちらも、項羽から劉邦へ寝返って功績を残しています)にならったのか。」と聞かれますが、黄権は「私は劉備殿より過分な待遇を受けておりましたから、呉に降伏することは考えられず、しかし蜀へ帰る事も出来ません。そのため魏に帰順したのです。とにかく敗軍の将は死を免れれば幸運なので、どうして古人を慕いましょうか。」と正直に答えています。これに感心した曹丕は、彼を厚遇しました。

また、曹丕は劉備が死んだという報せを受けて、黄権を試そうとします。他の群臣がこぞって祝賀を述べる中、黄権だけが加わらなかったのです。曹丕は彼が来るまでの間、次々と出頭の催促の使者を出しました。周囲の者はみな驚きましたが、曹丕の前に現れた黄権は、顔色を変えることなく、立ち居振る舞いも普段通りのままでした。

黄権は己を飾らない、実直な性格だったようですね。

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司馬懿との関係、そして手紙の意味

黄権の事を手紙に書いた司馬懿は、実際に彼を高く評価していました。

司馬懿は黄権に「蜀には君のような人が何人居るかね。」と聞くと、彼は笑って「それほど目にかけて下さるとは、思いもよりませんでした。」と答えています。

しかし、わざわざ諸葛亮に対して手紙に書くのは何故でしょうか。それも、「彼は貴方の事をいつも話していますよ」と……。

これは、心理戦ではないでしょうか。

黄権は、劉備に仕えていました。蜀の内部事情を少なからず知る人物です。「常に貴方を称えて話していますよ」というのは、「貴方に関する情報は全て聞いていますよ」と、脅かしているように聞こえます。

諸葛亮に対して効果があったのかはわかりませんが、司馬懿による、相手を困惑させるための方法だったのではないでしょうか。

諸葛亮からの手紙

実は、諸葛亮からも司馬懿に対して手紙が送られています。この返事か定かではないのですが、蜀書・諸葛亮伝による「黙記」には、諸葛亮から司馬懿へ書簡を送ったとあります。しかし、その内容は書かれていません。

物凄く気になりますよね。陳寿も裴松之も、曹丕が呉質に宛てて送った手紙を(しかも全文!)載せるくらいならこっちも載せてよ!と思ってしまうのですが、もしかしたら大した内容じゃなかったのかも知れません。

司馬懿へ答えたように、黄権は余計な事を言わないような気もしますしね。意に介さず、「そうですか、黄権は息災ですか。良かったです。よろしく伝えてくださいね。」とか書いてそうです(笑)。

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まとめ

敵同士での親交と聞くと、晋の羊コ(よう こ)と呉の陸抗(りく こう)を思い浮かべます。彼らはお互いを認め合って薬や酒を贈り合い、毒味もせずに口にしました。互いを信頼していてこその行動です。

司馬懿と諸葛亮、この二人は、お互いの能力を認めていたことは確かだと思います。しかし、親交を深めるために書簡を送っていたかと言われると、そうではないように思えます。

諸葛亮が司馬懿へ、女物の髪飾りと服を送ったように、司馬懿もまた、心理戦の一つとしてこの手紙を送ったのかも知れませんね。

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高村真琴

高村真琴

投稿者プロフィール

猫とお酒と三国志が好きな一児の母です。
項羽と劉邦からハマってしまい、漢書と正史は既にバイブルの域に。中華街に行くのも大好きで、三国志グッズを探しては買い集めています。
わかりやすく、読みやすい文章を心がけて書いています。

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